★解体時の損傷例



本文のページ以外での損傷

本文のページ以外では、損傷する事は少ないのですが、解体する上で故意に損傷させる必要がある時や、作業上避けて通れない時が
あります。代表的な損傷例は以下の2点です。

見返し部分がある時は先に表紙から切って外しておきますが、

どの部分で表紙と接着されているかは書籍によって違いますので、

切る場所は区々です。製本糊で接着している場合は簡単に取れる

事がありますが、再製本時には見返し部分が無くなっている為に

本文と癒着してしまう恐れがあります。その為に見栄えは良くあり

ませんが、切って見返しの一部をこのように残してあります。


熱で糊を溶かした後、すぐに糊が固まる為に、表紙の取り外し

と「のど」から糊を取り去る作業は一体です。

その為強い張力で一気に表紙を剥がしますから、表紙全体は

もとより特に背表紙とその近辺は痛みます。

熱を加えると糊がのどと背表紙の間から漏れたり、元々はみ

出していた糊が溶けて汚れる場合があります。

また表紙だと熱により変色や縮み等の傷みが出る場合が

あります。


特に特殊な樹脂によりコーティングされた表紙の

場合は熱により背表紙付近の樹脂面が剥がれ

たり破れたりしてこのように汚くなります。





本文のページの損傷

最近の書籍は価格を抑える為に、あまり上質の紙を使っていません。品質が低下する紙ほど「のど」の部分の糊は紙の繊維に
吸着した状態になり、製本する側からすると価格を抑えられてなおかつ強度が増す訳ですから一石二鳥という訳です。
その上、さらに強度を増す工夫がなされているので、いくら「のど」と背表紙の間の糊を取り去っても、しっかりページの「のど」には残って
しまいます。
当店では特殊な方法により、特に酷く癒着したページの境目でも損傷を抑えながら剥がす事ができるようになりましたが、作業中は
剥がれる様子を目で確認できない上に、これらの作業中の感触は、綺麗に剥がれている時と同じ感触になる為、ある程度剥がしてみて、
初めて裂けている事が判るという、とても厄介な作業です。
正直な話、無線綴じの場合は、1冊当たり2・3ページは下記に示すような状態になる事があります。
また熱により変色や縮み等の傷みが出る場合があります。


損傷例1



紙の質が違う2枚の紙の「のど」部分では、悪い紙質のページは上の写真の白い部分のように
繊維ごと剥がされてしまう。 
カラーページとモノクロページの間や遊び紙に接着されている本文ページ、
アンケート葉書が接着されているような所で起き易い。



損傷例2

弱い紙どうしの場合、上の写真のように互いに紙の繊維ごと剥がし合って、剥がされた方は白くなり、
奪った方には相手の繊維が付着する。



損傷例3



カラーページは強力な糊付けがされている場合が多いので上の写真のようにインクが製本糊に付着して
剥がれ易い。




損傷例4

中綴じの場合は無線綴じと違って本文のページは製本糊が使われていません。ただグラビア等のカラーページどうしでは製本糊で綴じ付けられている場合が多々あります。強力に接着されていた場合、「のど」の部分はホッチキスの穴の所から破れやすい傾向にあります。



損傷例5

無線綴じ、中綴じを問わず、カラーページをはぎ取る時は、皺ができます。これは熱を加える範囲を
なるべく小さく、かつ高温にする為に、縮む部分と伸びる部分ができるからです。



損傷例6

無線綴じのカラーページとモノクロページの間は、強力な糊付けがされている場合が多いので、紙質の
悪いモノクロページの方がカラーページに付着して、「のど」と平行に裂けてしまう場合があります。
「のど」から「小口」に向かって裂けた時は傷口が浅い間に発見できるのですが、下の写真のように「のど」
と平行に裂けると、発見が遅れがちになります。