●書籍の解体



以下に各作業の説明ならびに注意点を説明しますが、特に注意点の部分は
よく覚えておいて下さい
後から「こんなはずではなかった!」というような事にもなりかねません。
なお解体作業は本を棄損する(物をこわす)行為ですので、それを知った上での
ご依頼という事になりますから、解体による補償は原則的にはありません。


無線綴じの書籍の解体
作業は、次の手順で行います。
1.一枚になっている表紙、背表紙、裏表紙を本から外す。
2.見返し・遊び紙があれば、本文の最初のページまたは最終ページと共に他の本文から外す。
3.見返し・遊び紙があれば、本文の第1ページまたは最終ページから外す。
4.本文を1枚(表裏2ページ分)単位に裂く。


1.表紙を外す
製本用の糊は熱で溶けるので、コミック等のソフトカバーの装丁の

場合は比較的簡単に外せます。熱で糊を溶かした後、すぐに糊が

固まる為に、表紙の取り外しと「のど」から糊を取り去る作業は

一体です。



注   意

見返し部分がある時は先に表紙から切って外しておきますが、

どの部分で表紙と接着されているかは書籍によって違いますので、

切る場所は区々です。製本糊で接着している場合は簡単に取れる

事がありますが、再製本時には見返し部分が無くなっている為に

本文と癒着してしまう恐れがあります。その為に見栄えは良くあり

ませんが、切って見返しの一部をこのように残してあります。


糊が固まる前に、表紙の取り外しと「のど」から糊を取り去る
作業を終える必要から、強い張力で一気に表紙を剥がします
ので、表紙は痛みます。
熱を加えると糊がのどと背表紙の間から漏れたり、元々はみ
出していた糊が溶けて汚れる場合があります。
また熱により変色や縮み等の傷みが出る場合があります。

特に特殊な樹脂によりコーティングされた表紙の

場合は熱により背表紙付近の樹脂面が剥がれ

たり破れたりしてこのように汚くなります。





2及び3.見返し・遊び紙を本文から分離
見返しや遊び紙があれば、本文の最初のページまたは最終ページ
と共に他の本文から外します。見返しや遊び紙の役割は本文を
保護する事ですから、本文との接着部分はかなり製本糊を厚く
染み込ませあります。
その為、他の本文とは別にして慎重に分離作業をする必要が
あります。


注   意
慎重に作業を行ったとしても、製本糊が深く染み込んでいた場合は、

破れたり印刷の一部が剥がれたりする場合があります

この度合いはカラーページよりも本文のような染み込みやすい紙質で生じます。

また分離後の製本糊を拭い去る事は不可能ですので、ページの癒着にご注意下さい。





4−1.「のど」の部分を解体する
一般的な無線綴じの説明では1枚(表裏2ページ分)1枚が
重なり合って、「のど」の部分に糊が染み込むように筋を入れて
製本糊を塗るとなっていますが、主にコミックではそのような
製本は稀で、このように本文は4枚(16ページ分)一組でそれを
重ねて「のど」の部分に製本糊が塗られています。

大きくなるよ
この4枚一組の束を解体して見開いた状態にすると、この図の
ように「のど」の部分に一定間隔で穴が開けてあります。

この4枚一組の構造は、図のように「のど」の部分に開けられた
穴を重ねる事で骨を作り強度を増します。ただ、外側になるほど
穴が広がってしまい強度を維持できないという弱点があり上質の
紙を使う傾向があります。
その為コスト高で、ページ数が少ない割りには本に厚みが出て、
その結果重くなる等、流通面では不利になります。
また16ページが一組になりますから、16の倍数ページに固定
されるので編集上も何かと不都合が起こります。

そこで最近の「のど」の構造は、質の悪い紙でもある程度の
強度を維持できて、また「のど」の厚みを薄くする工夫が色々
なされています。
例えばこの図では、4枚一組の内、中側の2枚だけの穴を
重ねて、残り2枚は「のど」で分離して4枚にして挟むという
物です。
これならフリーになったページの枚数を適当に調整できるので
16ページの倍数に拘る必要がありません。

その他にはこの写真のように丸い小さな穴を沢山開けて、
糊を染み込みやすくすると共に糊の接触面積を増やして
強度を上げているものがあります。

また従来どおり一枚(表裏2ページ分)づつの紙を束ねる際に、一定枚数ごとに先に多量の糊をのどの部分に流し込んでおいて強度を増したものもあります。



注  意
製本糊は「のど」の部分に染み込んでいる為、ページ紙に付着した糊を除去する事はできません。
解体のみを依頼されて、あとからご自分のスキャナーで取り込まれる場合は、けっして自動原稿
送り装置(ADF)を使ってはいけません。
センサーや送り込みローラー等に、圧力や摩擦熱で溶け出た製本糊が付着すると故障の原因に
なります。
また原稿台に乗せてスキャンする場合、装置本体から出る熱で糊が溶けだしますので、原稿台を
曇らせる原因になり、フィルムスキャン等の高解像度スキャン時には画像に悪影響が出る可能性が
あります。
ご自分でスキャンされる場合は、「のど」の部分から5ミリから
1センチ以上離して切断し、製本糊のカスがページに付着して
いない事を確認してからセットして下さい。
万が一お客様のスキャナーあるいは取り込み画像に障害が出ても
当店は一切責任を負いません。





4−2.「のど」の部分を裂く
1ページづつバラバラにする為に「のど」のところで裂きます。
見た目は汚いですが、凸凹になる事で再製本時に糊の接触面積を増やす事になり骨の役割を
してくれます。
断裁機を使うと綺麗に一直線に切断できそうですが、4−1で説明
した補強の為の穴に、針のような紙屑ができてしまいます。
これは閉じた穴に製本糊が盛り上がるように付着しているので、
断裁した際に微妙に位置ズレが起って作られます。
この紙屑は断裁時の圧力で溶けた製本糊により付着しているだけ
なので取れ易く、スキャン時には原稿台の上に落ちてスクリーン
トーンの模様を崩す原因になります。

4枚一組または2枚一組の内の一番中側のページを見開いた
状態で、極まれに2ページに渡って1枚の絵や写真が掲載されて
いる場合があります。
当然中側のページは表裏4ページ分が1枚の紙でできています。
このような場合は「のど」の部分を引き裂かず絵や写真を温存する
ようにします。

大きくなるよ


注   意
慎重に作業を行ったとしても、製本糊が深く染み込んでいた場合は、破れたり印刷の一部が

剥がれたりする場合があります

この度合いはカラーページよりも本文のような染み込みやすい紙質で生じます。

また分離後の製本糊を拭い去る事は不可能ですので、ページの癒着にご注意下さい。




中綴じの書籍の解体

作業は、次の手順で行います。
1.真ん中のページに出ているホッチキスの芯を起こす。
2.背の部分からホッチキスの芯を引き抜く。
3.グラビアページが糊止めされていた場合は剥がす。

糊止めのページがある場合
イラスト等のグラビアページが付いていた場合、最近ではここに
何層ものページを糊止めで付け足すようになりました。

大きくなるよ
このように剥がす事は可能ですが、ページが薄い割に糊が強力
なので、傷やシワ、あるいは破れたりする場合があります。

大きくなるよ


注   意
慎重に作業を行ったとしても、製本糊が深く染み込んでいた場合は、破れたり印刷の一部が剥がれ

たりする場合があります

また分離後の製本糊を拭い去る事は不可能ですので、解体後のページの癒着にご注意下さい。